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2010年7月 5日 (月)

イケメン?俳優・五月女璃玖の事件ファイル - 呪いの歌殺人事件 #01

「…つまりこのトリックを使えば、犯人はアリバイを手にしながら奥さんを殺害することが出来るってことさ」
雷が唸る絶壁に建つ古びた洋館。その居間の中心に少年は立ち、自信に満ちた表情で語る。
「ということは…誰もが奥さんを殺すことが出来たってことに?!」
「おい、君は分かっているのか?誰が妻を殺したのか…」
「ああ、心配ない」少年は凛とした目で言い放つ。「論理は、真実を縛り付けるのさ」
少年は部屋の入り口に立っていた警官に目をやる。それが合図だったのか、警官は少年の元まで歩み寄ると、小さな紙片を手渡した。
「そして、こいつがその決め手…奥さんが残したダイイング・メッセージだ」
「ダイイング・メッセージって…それ、遊佐(ゆさ)さんの名刺じゃないの」
「ぼっ、僕じゃない!君まで僕を疑うのか?!」遊佐は少年に詰め寄る。「君だって言っていたじゃないか!奥さんが亡くなった寝室はあの時雷による停電で真っ暗。そんな中で、机の上に置かれた何枚かの名刺の中から僕の名刺だけを選び取るなんて不可能だって!」
「ああ。だからこいつは、遊佐さんを示してるわけじゃないんだよ」
「何だって?」館の主である老紳士は驚きの声を上げる。「じゃあ、一体誰を…?」
「旦那さんは覚えてる?」少年は懐から一本のボールペンを取りだす。「奥さんの遺体のすぐ傍に、このペンが落ちていたのを」
「え…うーん、どうだったかな」
「うん、まぁ落ちてたんだけどね。実はさっきこいつを拝借してみたんだけど、インクが切れてるみたいで書けなかったんだ」
「あ、ああ…確かに妻は、書けなくなったペンを捨てずに取っておく癖があったが…それがどうしたんだ?」
「あれ?分かんない?俺らにはこれは"書けないペン"だけど、暗がりの中手探りでこいつを見つけた奥さんにはどう思えたと思う?」
「ま、まさか…」
「そう。暗い部屋で奥さんが手にしたのは"遊佐さんの名刺"と"書けないペン"じゃなく、"紙きれ"と"ペン"だった。そうなれば、今わの際の奥さんがすること、想像がつくよね?」
少年は更に鉛筆を取り出し、名刺の上を軽く何度も滑らせた。
「奥さんはちゃんと書いていたんだよ」少年は"マサシ"という文字の浮かび上がった紙を掲げる。「旦那さん、あんたの名前をな」
「なっ…」老紳士は声を詰まらせる。
その瞬間、外から青白い光が差し込む。少年は、小さく笑って言った。
「月の光は、必ず真実を照らすんだよ」

「はい、カットー!!」
監督の声がスタジオ中に響いた。

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